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良覚院庭園
江戸時代末期 (改修)/池泉廻遊式/仙台市
良覚院丁公園は、市街地の中にありながら濃い緑に覆われ、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
公園内には、茶室「緑水庵」があり、庭園にアカマツが植えられ、春日石灯篭、池に架かる一枚物の石橋、見応えのある景石などが置かれ、訪れる人に憩いのひとときを与えてくれます。
特に6月の梅雨の時期は、庭園一面を覆っている苔が十分に水を含んで、緑のじゅうたんを敷き詰めたようになり、木々の深い緑と相まって光さえも緑色に輝いているように感じられます。
市街地に残された杜の都の貴重な緑のスポットです
現在遺存している庭園は良覚院の隆盛の時期に造られたものと思われるが、庭園についての資料に欠ける。江戸末期嘉永二年(1849)庭園は新たに手が加えられたと伝えられるが、明治五年廃寺となってから庭園はさびれ、明治二十一年(1888)から五年がかりで全面的に改修された。庭園は往時の三分の一が残されていて、石燈籠、樹林などはそのまま残っており、庭全体は往時の庭景をとどめている。また昭和三十年に市の所有となり、さらに補修が加えられ、現在は茶亭緑水庵として一般に公開されている。
庭園は池泉を中心に変化に富んだ池汀をもち、護岸石組も実用面で池の造形が永く保たれている。庭園北東隅に湧水を利用した井泉石組、ここから水路を経て池泉に流れ込む、南部には表徴的に表現された枯滝石組、三尊石組が配され、池中には沢渡石を配し 石橋が架けられている。茶亭(緑水庵)前池汀は、小規模な石浜表現として平天石を配し、園路は飛石、敷石、景物として風致を整える石灯籠は、基本型、変化 型、蘭溪型(竿が蕨手)雪見型、自然石型など多種を配し、園内には580余木の樹木が茂り、アカマツ、オオゴンヒバ、モミジ、カシなどの古木が池泉を覆 い、特にアカマツの大木がとりわけ目を引く廻遊式庭園である。
所在地: 〒980-0812 宮城県仙台市青葉区片平1丁目2−5
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見龍寺庭園
江戸時代初期 (追築)/池泉観賞式/涌谷町
現存する庭園は、山畔に沿った小規模の池泉と、近くに三尊石組、立石、横石、伏石を配し、芝敷の隅に景として、創作型雪見燈籠(脚三本)を配し、あたりは小刈込をあしらった程度の簡素な構成をもつ庭園である。池泉北の山畔部は斜面を利用した築山表現とし、小ぶりの石組を若干配し、山頂部に層塔型石燈籠(火袋と火口がある三重塔)を配し、全体を小刈込年、背景は高木と竹林である。後世の改変を受けていて、その旧態は不明である。
また、庭園の東南隅に湧水がありそれから西へツツジ類の小刈込に沿った水路石組が存する。書院、庫裡は後世の改変を受けているらしく、庭園と建物の位置関 係も不明であるが、江戸時代中期以降の自然主義的な傾向が旧態として残され、風趣が感じられる庭園である。
所在地: 〒987-0121 宮城県遠田郡涌谷町涌谷龍渕寺10
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旧有備館庭園
江戸時代中期 (修理)/池泉廻遊式/大崎市
庭園の敷地は13,232平方メートル、中央部の約5,200平方メートルを台形の池が占め、池泉には亀島、鶴島、兜島のほか土橋の架かる茶の島(茶呑島)四島を配している。茶の島には松花庵(清水道竿作 昭和五十年復元)と称する茶亭があり、南岸には出島といわれる大小二つの半島が突き出ている。池泉の周囲500メートルの 園路を巡ると有備館の前から池の対岸の眺めは、城山の断崖が見事な借景をなし、一層の美観を添えている。ウラジロガシの古木は作庭時の頃のもので、樹齢300年に近いものである。西南隅に小滝、岩石や燈籠を用いない園内唯一の石組で、断崖の下を流れる内川からの水が流れ込む。滝脇に稲荷社、近く のモミの古木(推定樹齢200年)ヤマザクラの古木(推定樹齢280年)が取り分け目を引く。庭園内(池周辺地区)には360余本の樹木がありモミ、スギ、マツ、サルスベリ、イチイなど推定90〜300年の老大木が水面に大きな樹影を映している。
北東園路脇の竹林、ツバキの列植は景観は勿論のこと実用的用途を考慮して植えられたものである。西苑にはアヤメ園やミヤギノハギ苑など四季を彩る花壇がある。広大な池泉を有する庭園は景趣に富んだ大名庭園と呼ばれる庭園様式でもある。
所在地: 〒989-6433 宮城県大崎市岩出山上川原町6
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長谷寺庭園
江戸時代初期 (改修)/池泉観賞式/石巻市
現在依存している庭園は、古庭園に見られる庭園形式として、焼失前の本堂北側の斜面を利用して石組や植栽を行い、下部に池を掘った上下二段式の作庭形式で建物からの観賞を目的とした庭園である。
斜面は、ツツジ類の小刈込みに覆われているが、高所まで小ぶりな石組が各所にみられ中には倒壊しているもの、埋もれているものもあり、作庭時の石組の全体的構成は定かでない。斜面裾部に沿って細長い小規模の池泉が作られ、東隅の井戸から引水し、西側に排水路をもつ。池中には数個の石が配され、建物側には、石浜風石組、また山畔 には石組で護岸され旧態を残している。その作庭意図を容易にうかがい知る事ができる上下二段式庭園を表現した庭園である。また、堂を囲む境内で見られる樹木は、北限のウラジロガシ、タブノキ、ユヅリハ、サクラ等の古木のほか、境内周囲はスギ植林地となっていて、林床にはヤブ ツバキ、アオキ、ウラジロガシ、シロダモ、チャノキ、イヌツゲなど常緑樹が多く茂り、俗化されない自然が豊かな環境につつまれている。
所在地: 〒986-0002 宮城県石巻市真野萱原2
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寿徳寺庭園
江戸時代中期 (修理)/観賞式/仙台市
庭園は、江戸時代中期、寿徳寺第五世中興別山禅可和尚享保五年(1720没)が建物の再建復興当時に作庭されたと伝えられるが資料に欠ける。現在の庭園は、書院の東南に位置し、池泉を中心とする観賞式庭園である。池泉の護岸石組等は後世の改修を受けているが、庭園の全体的役割は、旧態を残しているようである。特に庭園東隅には景致的石組とした滝石組、流水石組には作庭当時の姿が偲ばれ、池には軽快な反りを持つ切石橋を架け、立石、燈籠を配し、サツキ類を小刈込 で景をとる手法をとるなど洗練された構成を有し、庭園周囲はアカマツ、コウヤマキ、ケヤキ、シラカシ、カエデ等高木を背景とした自然的環境が保たれ均整の とれた庭景をなす庭園である。
所在地: 〒981-0943 宮城県仙台市青葉区国見1丁目15-1
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清水寺庭園
江戸時代中期 (改修)/池泉廻遊式/栗原市
時代の往時を偲ぶ様子が殆どないが、たたずまいは老松の深い木立に囲まれた山の緑を背景として、裏手の山沿いに沢を引き滝を経て、水路から池に水を入れられていたが現在は沢が土砂で埋まり枯滝となっている。作庭当時の全体的な庭景は現在の庭園からは想定できないが、池に残る地割やその池汀のゆるやかな曲線 からは、作為的な所がなく付近一帯は景趣観賞によく、古さを感じる落着いた風光明媚の庭園として、町の指定を受けている。
所在地: 〒989-5301 宮城県栗原市栗駒岩ケ崎桐木沢
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煙雲館庭園
江戸時代初期/池泉廻遊式/気仙沼市
この庭園の特質は、自然丘陵の北から西に連なる斜面を庭に取り入れ、中段の山裾に池泉をつくり、東南が開けた丘になっている。中島は築山として盛り上げられ中腹に据えられた縦長のするどい立石は力強く、全体を引締めている。また、庭園の立体的地割や各所に配された景致的石組(護岸石組、築山石組、石橋)や燈籠は全体的構成を乱すことなく、その間に小刈込みを配して景をとる手法が用いられ、全体が幽すい、閑雅で樹木が多く四季の変化に富んだ庭景を作り出している。この庭園の下段東南は、眼下に広がる海景も取り入れ、庭の美しさと共に、目を転ずれば気仙沼湾、遠く霞む金華山まで眺望される借景の壮大さを添えている。二世清水動閑(慶長19年〜元禄4年・1614〜1691)名は紹之、伝習庵と号した。動閑は伊達政宗の茶道頭となった清水道閑の外孫であり、祖父の指導 で茶乃湯に才能を見せ、祖父の跡を継承して、藩の茶道頭となった。清水道閑は、古田織部の門下で、政宗の茶乃湯外交に大きく寄与したが、清水道閑の時代に なり、幕府の茶乃湯が石州流に転換したので、清水道閑は、片桐石州に入門し、長年の修行の末伝授を受けた。仙台藩の茶道は、一世清水道閑の織部流から、石州流となり『石州流清水派』という茶乃湯が確立された。
所在地:〒988-0113 宮城県気仙沼市松崎片浜197
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旧亘理邸庭園
江戸時代中期 (修理)/露地 (茶庭)/登米市
庭園は清水道竿(1662〜1737)(別記)の作庭による路地(茶庭)庭との言い伝えがあり、もしそうだとすると津田氏所領時代の作庭と考えられるが、資料に欠ける。
現在は茶室等の一部の修復はあるものの、作庭当時の旧態を保持しており、庭内の飛石や敷石を主体とした簡素な構成には、仙台藩茶道頭としての作庭者の心境 がうかがわれる。庭園内植栽の中で最も目立つのは、中央に植えられた赤松(推定樹齢350年)がある。見事な樹姿を保ち、主木としての存在的背景を残して いる。
庭園及び建物は亘理家より、平成七年十月寄贈を受け、市により管理されている。
所在地:〒987-0511 宮城県登米市迫町佐沼内町
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箱泉寺庭園
江戸時代中期 (修理)/観賞式/石巻市
庭園は山の斜面を利用してつくられた林泉庭園で庭の現況は、往時のままといわれている。江戸時代中期、安永五年(1776)の『寺書出』や『封内風土記』に、境内景地の事として、箱泉池。一字岡(本堂西の後丘)心之字池『法華経の一部を書い た(一石一字書)が収められている』阜之字池、(慈覚大師作)柳之池、(岸に柳の木)独鈷水、(泉の噴するところ)万願石、千願石、偃石(臥石)起石、流 石、アマイヌ石、(コマ犬形の石)垂糸栗、(大師の袈裟をかけた枝垂栗)甘蕨、(灰汁抜きなしで食べられる)等石及び樹木についての記述が見られ、現在で もこれらの池及び各石は旧態のまま良好に残されている。現在斜面に植栽されている素材は主として、サツキ、ツツジ類等を丸刈込や角刈込に配して景をとる手法が中心をなっていて、池には土砂が堆積しているが、各所に石組が配され、地形と共に立体的に変化に富んだ構成を持つ庭園である。
所在地: 〒987-1103 宮城県石巻市北村神尾48
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